日本選手権2006決勝トーナメントレポート
第3回 ユーザー記者 古田島泰裕(「ターパン牧場」牧場主

1、はじめに

 皆さん初めまして。まずこの場を借りて皆様にご挨拶が出来る事を何よりも光栄に思います。
 昨日に行われたディメンション・ゼロ・日本選手権2006の決勝トーナメント。国内産のTCGとして史上初となる300万もの賞金を掛けて行われた今大会は全国各地から強豪を招いて行われました。
 380名の激戦を勝ち抜き、今日という舞台で再び競い合う事を許された12人のプロプレイヤー。ディメンション・ゼロの黎明期を駆け抜けた全国のユーザーの代表である彼らは受付を済ませた後、これまでの練習の苦労やディメンション・ゼロに1年間携わってきての思い出などを話の種に和やかに談笑。
 しかし、試合が始まると会場の空気は一変。
 そこはプロプレイヤー同士の和やかな空気が流れる語らいの場から一転し、プロプレイヤー同士の力と力がせめぎ合う闘いの場へと変貌を遂げました。
 厳かに大会運営を行うスタッフの努力を始めとし、試合風景が全国中継されるプレッシャー、仲間と歩んだ練習の日々を無駄にはしたくないという想い。そして何より、今日この場に12人の1人として参加できたから、参加している彼らだからこそ猛烈に心に湧き上がる『ディメンション・ゼロの頂点に昇り詰めたい!』というプレイヤーとしての性が会場の空気を張り詰めたものに変えていき、そのプレイヤーから発せられる気負いこそが会場をTCGの最高峰を争うに相応しい舞台へと仕立て上げたと言えるでしょう。
 重く、苦しく、居るだけで心が磨り減るほどの緊張感に包まれた決勝トーナメント会場。ユーザー記者としてあの場に居た私があれ程の緊張感を味わうのですから実際に試合を行う選手たちに降り掛かった重圧は如何ほどのものだったのでしょうか。恐らく私の想像も及ばないほどの重圧だったでしょう。
 ですが・・・。
 願わくば、いつの日にか私もあの舞台へ。記者ではなくプレイヤーとしてあの舞台に立ち、あの緊張感を背負い、あの場で自分の力量を計りたい。
 苦しい程に重く張り詰めながらも、そう思わさざるを得ないほどに魅力的な決勝トーナメントの場でありました。

 自己紹介が遅くなりました。
 この度ユーザー記者として決勝を観戦させて頂き、その模様をレポートする任を承った古田島泰裕と申します。
 ディメンション・ゼロの始動の年であった2005〜2006。この1年でプロプレイヤー・ジャッジ・ブロガーとして沢山の方々との交流を得た私ですが、その第1紀の締めの舞台をユーザー記者として伝える役目を有難くも頂戴しました。
 ユーザー代表の記者としてネット中継が成されなかった選手たちの試合模様を伝えるのはもちろんとし、12人のプロプレイヤーによる激闘の記録が皆さんの記憶に残るお手伝いが出来れば幸いです。


2、対戦レポート/1回戦
串田安優 vs 名倉裕也

 TCGプレイヤーにとって求められる「強さ」には幾つかの要素があるが、その中でも高額賞金が掛かっている場に慣れているかどうかは1つの大きな要素であるだろう。自分の1つ1つのプレイ、より端的に言えば自分のミスプレイ1つで得られる賞金が何十万と変わってくる状況でTCGをした経験を持つプレイヤーはそう多くはない。その初めて押し寄せるプレッシャーの中でどれだけ正常な思考を保ち、冷静に状況を捉え、己の中の正解を素早く導けるかがTCGでは勝利の鍵となる。
 その面で捉えれば、この対決は串田プロに分があったと言えた。岡山が誇る強豪プレイヤーであり、過去幾度とGP上位入賞を果たしている串田プロに対し、決勝に臨んだ12人の中で若手高校生プレイヤーに位置する名倉プロがどれだけ喰らいつけるのか。
 互いに一礼すると共に交わした握手が決勝トーナメントの始まりを告げた。


1本目 串田(緑黒)vs名倉(4色プラン)

 この試合先手を取ったのは串田。その串田が第1ターンで<バードマン・ソウル>を祈り捲ったプランで見せたのは<兎娘キューティ・バニー>。4色プランというD-0の独自のドローシステムとも言える「プラン」を駆使する堅固な牙城を打ち破る為に有効な先鋒が間違いなく串田の手に届く事が約束された。
 串田は2ターン目にバニーによりENを加速させる事に成功し、このバニーは相手の<グレン・リベット>であっさり処理されたものの、その後プランから<見つめる人形アリッサ>を展開しつつ、手札・プランから共に1枚ずつ計2枚の<失恋の痛み>を打ち、この時点で名倉の手札に大型ユニットへの対処手段が無い事を確認する。
 そして、6ターン目<戦虎タイガーアイ>7ターン目<イビルアイ・サージェント>をプレイし、盤面に強力な追撃ユニットを置きつつ、アリッサを前に進め攻勢の構えに入る。

 対して名倉は後ろに控えていたタイガーアイを瞬時に手札からの<絶望の連鎖>で排除せしめ、中央エリアへと進んで来たアリッサを容認し1点目のスマッシュを自ら受け入れる。
 そして、ここからが名倉の、4色プランの本領発揮であった。
 名倉が受け入れた1点のスマッシュENから行ったプランに現れたのは<イビルアイ・ドライバー>。相手の2体のユニットが共にパワー5000である為、一挙に2体排除とは行かないまでもノータイムで前面に出てきたアリッサの撃退に成功してみせる。続いて串田がプランから<ヤマブシ・ドリアード>を展開しつつ、攻め始めた手は緩めまいとサージェントで2点目のスマッシュを入れてきたのに対しても、1度目のプランで<花束を捧げる乙女>を見せ、手札の<ドラゴンの洞窟>との連携によりサージェントを撃退しつつ、自身のスマッシュを安全圏の1点にまで引き戻す。実に4色プランらしい安定した守りを見せた名倉であったが、しかし鉄壁の4色を突き崩そうとする串田の猛追はここから止まる事を知らない激しさを見せる。

 9ターン目でENを増やすのを止めた串田はプランに見えた<失恋の痛み>をプレイする事無く、自陣に残った最後の攻め手であるヤマブシを前へと進め、2点目のスマッシュを改めて刻んだ。このヤマブシに対し、名倉は又もや1度目のプランで<ステルス・スナイパー>を出現させる事に成功。厄介な加速能力を持ったヤマブシではあったが、<ドラゴンの洞窟>との複合火力の前には敵わない。しかし、隙は生まれたとばかりに串田は手札からひるむ事無く、2体目の<ヤマブシ・ドリアード>を盤面へと呼び出す。
 続く10ターン目で串田のプランには<バニー>が見えたが、彼は非力なユニットは最早必要なしと判断し、手札から<失恋の痛み>をプレイ。名倉の手札には<ステルス・スナイパー>と<ドラゴンの洞窟>しかない事を確認。洞窟を墓地へと送った串田は逡巡の末、ヤマブシを敵軍エリアまで進ませ、後続を展開する事よりも相手に4点目までスマッシュを入れる事を選ぶ。準備は整った。

 敵陣深くまで切り込んだ串田のヤマブシは名倉の<センチ・ピート>によって、あえなく手札へと帰還するが、その後も串田は更にユニットを展開し続け、遂に13ターン目には5点目のスマッシュを入れる事に成功。
 そして、迎えた14ターン目。相手のリリースENを確認した後、彼は1ターン目に自らがENに置く事を宣言したカードの名を再び唱えた。

「<生命の門>、Xは6で<タイガーアイ>」

串田安優 1-0 名倉裕也


2本目 串田(青単)vs名倉(緑単ウィニー)

 串田の猛攻を受け、鉄壁と謳われた4色での敗退を喫した名倉。
 元より1回戦開始前にGP上位常連である串田に対し、「楽しめればいいですね」と胸を借りるつもりで挑む姿勢を見せていた彼だが、4色の牙城が崩れると共に彼自身の心も折れてしまったのだろうか。否、そんな事は無い。30分にも渡る長期戦を敗北こそしたが、名倉の心が闘う姿勢をまだ崩していない事をデッキが証明して見せた。

 先手を取った名倉がプランで見せたのは<小さな牙ガロン>。串田が行ったバニーによるEN加速には及ばないものの、顔を上げ前を見据える原動力とするには充分なカードと言える。しかし、1戦目で敗北を喫した為の向かい風は確かに名倉に吹いていた。

 名倉2ターン目:ガロンを中央投下→プラン・<ハナビラニカワ・ドリアード>
 名倉3ターン目:プラン・<エメラルド・ソウル>→更新・<生命の門>

 実に20体近くの低コストユニットに加え、デッキの爆発力を増す<バードマン・ソウル><小さくて大きな力>を3枚ずつ有している名倉のウィニーデッキとしては優れた回りとは言い難い序盤の流れである。ここで名倉は無理にプランを更新せず、返す串田のターンに手札から<チェリー・ボーイ>を展開。
 そして、迎えた4ターン目。ついに名倉に追い風が吹く。
 4ターン目の名倉の第1プランに現れたのは<蜘蛛の巣をまとうフェアリー>。彼の緑単ウィニーの独自のパーツとも言えるこのフェアリーが最高のタイミングでのアシストを果たした。
 これにより更に豊富なENを得た名倉は5・6ターン目と順調にユニットを展開。続く7ターン目では待望の<バードマン・ソウル>がプランに現れる。更にはプランから<バーサーカー・ドラッグ>をもプレイし潤沢な手札を得る。

 対する串田もその間に手札から<金砂の魔女>をプレイし、増えすぎたユニットを少しでも迎撃すると共に魔女の効果で<真空の魔氷バキューム>を展開し盤面の制圧を試みる。しかし、その願いは豊富に整った名倉の手札の前には叶わず、バキュームは大幅にドラッグによって強化されたバニーによって討ち取られる。
 盤面を一挙に切り返す手段を失った串田の抵抗は実質ここまでであり、残るはターンを迎える毎に着実に増援を齎す名倉に対し、盤面に出て活躍をする事を許されない<銀行を守る獅子>が悲しげに吼えるだけであった。
  
串田安優 1-1 名倉裕也


3本目 串田(緑黒)vs名倉(緑単ウィニー)

 両者の試合は2本目終了時点で既に残り時間は10分を切っていた。
 およそ5分強しかない試合時間では間違いなく通常のルールでは決着が付かず、両者共にエキストラ3ターンを意識してのデッキ選択を行った3本目。
 時間に厳しい女神が味方するのは果たしてどちらのプレイヤーとなるのか。

 互いの1ターン目のプランは串田・<失恋の痛み>、名倉・<カオスビースト・グリフィン>と2本目を落としたものの串田にまだ風向きが残っているように取れる雰囲気。
 串田はこの失恋で名倉の手札を確認し、僅かに迷いを見せた後に<兎娘キューティ・バニー>を抜く事を選ぶ。相手の序盤の動きを封じるのが重要と判断し、事実名倉は2ターン目に動きは無し。
 そんな名倉に対し、串田は3ターン目に手札から<イビルアイ・サージェント>を出し、場を優位にすべく積極的に動く。名倉のプランは<エメラルド・ソウル>と芳しくない。
 更に串田の4ターン目のプラン・<生命の門>→更新・<イビルアイ・ドライバー>で試合は大きく動く事になる。串田のプランに<イビルアイ・ドライバー>が見えている非常に危険な状況の中、名倉は残り時間の少なさからの焦りもあり、串田の手札に<小さくて大きな力>は無い事に賭け、手札から<冒険者ガッツ>をプレイするが、これは誤りであった。串田は<小さくて大きな力>を持っており、結果、プランから最高の援軍として<イビルアイ・ドライバー>が降臨する。このターンの終了を持って、串田と名倉の盤面ユニット差は実に2:0。名倉にとって通常通り続けても苦しい展開だが、後数分でエキストラターンに突入しようという現状では殊更に辛い盤面である。名倉は返す自分の4ターン目にプランから<ハナビラニカワ・ドリアード>の中央ラインへのプレイには成功するものの如何せん後手に回り切った感は否めない。
 そして、串田の5ターン目。プランに2匹目の<イビルアイ・サージェント>が現れ、名倉の眼前に更なる追加ユニットが今まさに展開されようとする中で試合時間終了のブザーが会場に響いた。

 これより串田・5ターン目(0ターン)→名倉・5ターン目(1ターン)→串田・6ターン目(2ターン)→名倉・6ターン目(3ターン)を行った上で両者のスマッシュを比べ、より少ない方が勝ちとなる。盤面に充分な大きさのユニットを2体展開済みの串田が有利かと思われる状況。
 しかし、名倉には一筋の光明が見えていた。ここまでに串田がENゾーンに置いたカードは緑が4枚に黒が1枚。緑が4に黒が1。
 そう串田は盤面のユニットを充分に移動させるだけの黒ENを有していなかったのだ。

名倉:スマッシュ0
串田:スマッシュ0

 ここが両雄にとって全ての分岐点となった。
 事前に説明は受けていたものの試合終盤の極度の緊張からか、それとも既にプランでサージェントを見てしまっていたからなのか。ここで串田は既に展開済みのユニットを前に進めスマッシュを稼ぐのではなく、プランのサージェントを残る自軍右ラインへとプレイし、数少ない黒ENでスマッシュに行けるターンを失ってしまう。尚且つ次の自ターンへの可能性を賭け、ここで更にプランをも確認した串田のプランに見えたのは<バードマン・ソウル>ではなく、<ヤマブシ・ドリアード>。4色の牙城を崩した彼女ではあったが、残念ながらこの窮地までも助けてくれるカードでなかった。
 対する名倉は続く自ターンのプランに見えた<チェリー・ボーイ>をプレイする事無く、ハナビラニカワを力強く前へと進め、1点のスマッシュを串田へと刻み込む。
 そして、串田の運命の6ターン目。ENに置いたカードの色は・・・緑。先のターンにてスマッシュを入れなかった串田が名倉に自分以上のスマッシュを入れる為には最低でも黒ENが2個は必要であり、一縷の望みを賭けて<小さくて大きな力>を求めプランを捲る串田。

<サキュバスの吐息>。
<兎娘キューティ・バニー>・・・。
<カオスビースト・ブレーメン>・・・・・・。

 そうしてプランは串田の願いには応えず、彼は自らが見落とした勝利の可能性を悔やみつつも、試合開始前同様に名倉への握手を求めるのだった。

串田安優 1-2 名倉裕也


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