日本選手権2006決勝トーナメントレポート
第4回 ユーザー記者 古田島泰裕(「ターパン牧場」牧場主

3、対戦レポート/2回戦
岩崎祐也 vs 名倉裕也

 勝負事には必ず「流れ」というものが存在する。自分が今、有利なのか不利なのか。自分だけでなく相手のターンにも行動が可能なディメンション・ゼロでは殊更その「流れ」を判断する事が重要であり、状況に応じて攻めの姿勢と守りの姿勢を明確に取らなければならない。
そして、強豪プレイヤーと呼ばれる人種はその「流れ」を正確に読み取るだけでなく、試合の流れを自分の方に引き寄せるだけの技量・運を持ち合わせているからこそ勝ち上がれる。
盤面を作り上げる「技量」、流れを引き寄せる「運」。だが強豪と呼ばれる彼らだからこそ持ちえる本当の武器はそこではない。

 真に勝ち上がっていく者に必要とされるのは何なのか。

 岩崎プロと名倉プロの両雄の対決。
この2人の闘いには確かにそれが顔を覗かせていた。



1本目 岩崎(青単)vs名倉(4色プラン)

 この試合を振り返ってみれば、名倉の<失恋の痛み>から全ての流れが決定していたと言っても過言ではないだろう。

 先手を取った名倉に対し、後手の岩崎が1ターン目のプランで見せたのは<ギガント・ゴールドフィッシュ>。後手でこそ最大限の効力を発揮する金魚が中央に投下された後、加速されたのは岩崎のENだけでなく、ゲーム展開そのものも白熱していく。
岩崎はゴールドフィッシュによるEN加速を成功させると、続く3ターン目にプランから<スワロー・ポール>を展開してみせる。順調な滑り出しの岩崎に対し、名倉は4ターン目のプランの<シャドー・ソウル>を維持する事で静かにターンを終える。そして、岩崎がプランに出た<銀行を守る獅子>を手札に入れんと優先権を放棄したのに対してプレイされる名倉の<失恋の痛み>。
名倉はここで<リセット・コマンド><金砂の魔女><水底の歌劇場><真空の魔氷バキューム><ハイタイドセイコー>と4色プランに対して有効なカードが多い岩崎の手札から<水底の歌劇場>を選択する。しかし、この選択は岩崎を果敢な攻めへと挑ませる事に繋がっていった。

 <歌劇場>を抜かれた岩崎ではあったが、手札に残った金砂の魔女とバキュームという2体の優秀ユニットに加え、プランに控えている最高のフィニッシャーである<銀行を守る獅子>の存在を改めて見直すと、盤面のスワロー・ポールを前へ進め、名倉へ1点のスマッシュを早くも入れた。ともすれば、これは性急に感じられるスマッシュではあったが、名倉のプランの<シャドー・ソウル>を消す事が既に結集している青の大型ユニットによる今後の攻め手を成功させる為には有効であると判断したのだろう。
又、<歌劇場>を抜かれたという事は逆説的に名倉の手札には<神々の雷>が無いというサインであり、早期に名倉へスマッシュを重ねておく事で2枚目の<歌劇場>を貼れた際にゲームを決められる状態にしておく事はもちろん、名倉にプレッシャーを与えつつ、盤面を押す事で相手に雷をキープし続ける事を困難にさせる意味合いもあったと言える。

 この早々と開始された攻めに対し、名倉は1プランの<イビルアイ・ドライバー>で軽やかに先鋒のスワロー・ポールを排除してみせる。3ENを残していた岩崎ではあったが、今後のゲーム展開の中では余分なENが無く、相手がENを残した事もあり、手札のハイタイドセイコーはプレイせずに自ターンを向かえ、静かにENを6点にまで伸ばし、名倉へとターンを返す。
名倉は受け取った6ターン目をまず冷静に優先放棄から始め、これに対しプレイされた<金砂の魔女>を確認し、プランを捲り始める。そして、プランから<スパイク・ガールズ>を展開し、ターンを終えた。岩崎は6ターン目も静かにENを7点へと伸ばして終了。
7ターン目、名倉はプランを1度捲り、そこから<グレン・リベット>を展開し優先権放棄。これに対し、岩崎は当然<銀行を守る獅子>を呼び出す事で応える。これを受け、名倉はプランを捲り、そこに有効な迎撃手段がない事を確認し、手札から<トロール砲撃術>をプレイ。<スパイク・ガールズ>の犠牲の元に<金砂の魔女>の撃退を試みる。魔女を倒すのならば、岩崎のプランが捲られておらず、手札の内容も検討が付いている今の内だという判断の上で放たれた砲撃術。確かに今ならば、例えスパイクの手札破壊で先程のバキュームが落ちなかったにせよスクエアに出たバキュームの効果対象が獅子だけでは魔女の効果は有効活用できない。この魔女とバキュームの特徴をよく理解している名倉の優れたスパイク流砲撃術は見事に岩崎の手札からバキュームを抜き取りつつ、効果が発動することなく魔女を墓地へと送った。
絶え間なく後続を招いてくれる魔女を倒された岩崎。本来なら7ターン目に魔女を前に進めつつ、獅子を控えさせ、バキュームを抱えていた筈だったが、流石にそう上手くばかりはいかないか。しかし、7ターン目の岩崎は手札に残っていた<リセット・コマンド>をENにすると、このターンに引いたカードを抱えつつ、5ENを残して力強く<獅子>を前へと進め、3点目のスマッシュを入れた。

 獅子への対抗手段を模索する名倉の8ターン目。初回のプランで現れた<失恋の痛み>を名倉はプレイし、岩崎の手札を明らかにする。彼の手札は<真空の魔氷バキューム>。一度失った筈の優秀な攻め手を引き直していた岩崎もさる者だが、それを有効に使わせなかった名倉のプランも大したものである。無論バキュームは盤面に獅子しか居ない状況では泣く泣く墓地へと送られる。
しかし、その後の名倉のプランが冴えない。プラン・<シルバーワイズ・ドラゴン>→更新・<神々の雷>→更新・<ドラゴンの洞窟>→更新・<イビルアイ・ドライバー>、と獅子への対抗手段もドローカードも見えないまま、名倉は4ENを残してターンを終える。対して岩崎は迎えた8ターン目をENを増やす事もなく、獅子によるスマッシュで名倉を5点へと追い込む事のみでターンを追える。プランすら捲らない岩崎の手札は何なのか。

 名倉の9ターン目。何はともあれ獅子を排除しなければならない彼のプランは<トロール流砲撃術>→更新・<センチネル・センチピート>→更新・<欲望の連鎖>。この<欲望の連鎖>で名倉はついに待望の<真夜中のダンスパーティ>を引き当て、すかさず獅子を排除する。相手のターンに回ってはバキュームやリセット・コマンドによる回避行動を取られる可能性があるからだろう。しかし、獅子の撃退した名倉に待っていたのは岩崎の更なる追撃であった。

 岩崎が満を辞してプレイしたカードは<水底の歌劇場>!!

 何と岩崎は1枚目の歌劇場を抜かれた後、金砂の魔女→銀行を守る獅子という展開を2枚のバキュームで見守りつつ、ここで既に2枚目の歌劇場を引き当てていたのだ。恐るべきドローの連続だと言わざるを得ない。これに対し、名倉は歌劇場が貼られたラインに<グレン・リベット>を移動させ、黒と青の2ENを残してターンを終える。
そして、岩崎の9ターン目のドローは<パラドクス・ストーム>。これもまた強力なカードであり、岩崎はENを伸ばすよりも最後の一押しをキープする事を選ぶ。恐るべきドローの連続を誇る岩崎だが、この決勝の場で見せた彼の強豪としての真髄はここまでのドローの強さとは別にあった。

 このターン最初のプランで見えた<シーホースルドルフ>を更新した時にこそ、彼の強豪プロとしての本当の凄さが現れた。

岩崎:スマッシュ0
名倉:スマッシュ5


 残りENが7点であった岩崎にしてみれば、リベットが控えている歌劇場ラインにプレイするユニットとして<シーホースルドルフ>は充分に優れていた。その後にプランを行い、2ENコストのユニットを展開する余裕も生まれるカードなのだから悪い筈が無い。しかし、岩崎はここで妥当な攻めを良しとせず、プランを更新するという選択肢を取った。

 そして、岩崎は<金砂の魔女>をプランに現した。その姿はさながらGP1で優勝を決めた中村慎太郎が行ったプランの更新を思わせるものであった。
中村のプランに出た<ハイタイドセイコー>、岩崎のプランに出た<シーホースルドルフ>。彼らはその目の前の攻め手に跳び付くのではなく、自身の勝利への可能性を検討し、追及してみせる事で自らの勝利をもぎ取ったのだ。

 こうして岩崎は日々の練習で捉えた対4色への戦略が実行可能である「流れ」を肌で感じ、それを実践してみせると共に訪れる可能性があった「勝利の瞬間」を見逃すこと無く、見事に自分のものへとしたのだった。

岩崎祐也 1-0 名倉裕也



2本目 岩崎(赤タッチ黒)vs名倉(緑単ウィニー)

 2ターン目の<兎娘キューティ・バニー>・3ターン目の<大巨人クレーター・メーカー>に始まる怒涛の名倉の攻め手に対し、岩崎は有効な防衛手段が取れない。
次々と名倉のユニットが増えていく中で劣勢になっていく岩崎であったが、1本目に訪れた流れを完全に自分のものへとした彼に対し、勝利の女神の祝福は続いていた。

 9ターン目までに8体ものユニットを展開した名倉に対し、岩崎は何とか迎撃を行い、スマッシュを2点までに抑えると、続くターン以降はプランから<ステルス・スナイパー><イビルアイ・ドライバー>をスムーズにプレイし続け、名倉のユニットを消しつつ、迎撃のENを残し続ける。
対して名倉は早期にプランに3枚の<生命の門>が全て見えてしまい、デッキの中の奇襲要素が潰えてしまう。それでも次々と攻勢を出し続けていた名倉であったが、12ターン目に残りの自分のライブラリーが4枚であり、相手のスマッシュが未だ4点である事実を踏まえ、岩崎の堅固な迎撃能力の前に投了を宣言するのだった。

岩崎祐也 2-0 名倉裕也



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