「D-0」日本選手権 本選 注目の一戦レポート
遊宝洞 前川勝

・はじめに

「D-0」が生まれてから丸2年……ついに「セカンド・センチュリー」最後にして最高の賞金額を賭けた戦い「日本選手権2007」が開催された。
 全国の予選を勝ち抜き、当日本選会場へ集まった決闘者は実に343名。その中で300万と「セカンド・センチュリー最強」の称号を得られるのは頂点のただ一人のみである。
 そんな苛烈な戦いが1ラウンド繰り返される度に、各対戦卓で劇的なドラマが生まれたであろうことは想像に難くない。今回のレポートでは、その中でもこれまで輝かしい実績を残してきたトッププレイヤー達の激戦「注目の一戦」卓での戦いの様子を追っていくこととする。
 プロプレイヤーから始めたばかりの初心者の人まで、そのプレイングや心構えには少なからず、学ぶべきところがあるだろう。是非とも参考にしてもらいたい。

・1回戦      今井亮太      VS      和田匠
      (日本選手権2006優勝)


 1回戦の注目卓は当然ながら、前年王者の今井亮太。決勝戦での見事なコントロールデッキ捌きを覚えている人もいるだろう。1年を経た今、彼のプレイングにはさらに磨きが掛かっているはずである。

Aデッキ 赤黒青流氷(今井) VS 青黒ヘルジャッカル(和田)

 エネルギーの増強や手札の調整が主となる序盤の立ち上がり。今井はまず《失恋の痛み》をきっちりと2ターン目にプレイし、手札の内容を把握し、重要カードを叩き落す。最早定番とも言えるプレイだが、重要な動きである。
 対して、和田も「セカンド・センチュリー」の最重要ユニットの一つ「呼声」ユニット《レディ・ラベンダー》をプレイし、エネルギーの軽量化にかかるが、そんな相手の動きを許す今井ではない。すぐさま、その《レディ・ラベンダー》《サキュバスの吐息》で墓地に送り、序盤の展開を完全に掌握する。
 しかし、今井が快調な引きを見せたかと言えば、そうとも言い切れない。無論《サイバー・チェイス》などを駆使してはいるが、キーカードを引ききれないでいたのだ。
 その間に和田は主力ユニット《ハウス・オブ・ヘル》をプレイ。スマッシュを開始し、今井のプランにあるシーズン制限カード《カオスヘッド・ドラゴン》もスマッシュの中に埋める。
 対して、今井はようやく来たプランからの《センチネル・センチピード》《ハウス・オブ・ヘル》を押し返すが、和田はそのターン中に《ハウス・オブ・ヘル》を再プレイし、次の自分のターンで3点目のスマッシュを与える。
 この忌々しい《ハウス・オブ・ヘル》を除去できたのは次のターンのプランからの《ステルス・スナイパー》。ダメージソースを取り除いた今井は再び試合のコントロール権を奪うべく、《サイバー・チェイス》から《失恋の痛み》をプレイ。しかし、和田はスタックで黒の新カードの中での最注目カード《レディ・ララバイ》をプレイし、手札を失いながらも更なるスマッシュへの布石を敷く。
 それに応えるように、和田のデッキからは《仮面童子》が登場。次の自身のターンで《レディ・ララバイ》とともに《仮面童子》を中央エリアへ前進させ、スマッシュを狙う。
 が、この攻めを重々読んでいた今井は《レディ・ララバイ》《時空を歪める者シュレーゲル》を中央投下。《仮面童子》を能力で屠り、次ターンに和田がプレイした追撃の「呼声」ユニットに対しても《粉雪の魔氷パウダースノー》をプレイ。自分のターンでしっかりと墓地送りにし、確実に流れを引き戻した上で、満を持して《幻影王ルドルフ》を展開。《時空を歪める者シュレーゲル》が墓地から呼び戻され、和田のユニットは生存を許されない状況になる。
 スマッシュ0ながら追い詰められた和田はプランに頼るしかなくなるが、なす術はなく、追加でプレイされた《イビルアイ・ドライバー》と合わせて進軍した今井の軍勢が1ターンで7スマッシュを叩き出し、貫禄の逆転勝ちを決めてみせる。

Bデッキ 白黒幽霊屋敷(今井) VS 赤白ビート(和田)

 敗れた和田は先攻を選択。早めに勝負を仕掛けるデッキの特性を活かし、コントロールデッキを操る今井が動き出す前に勝負を決めたいところである。
 そんな和田の期待に応えるように《逆鱗のコルブス》が2ターン目に降臨。次の自分のターンに敵軍エリアまで走り、2スマッシュを先制する。
 《逆鱗のコルブス》は敵軍エリアのスクエアにあるとユニットで踏み潰せなくなるため、生存率が高い。和田としては最低でももう2スマッシュは入れたいところだ。しかしながら、Aデッキ戦で「呼声」の能力を一度も使わせなかったような今井がそんなことを黙って許すわけがない。
 先ほどは和田の戦力だった《レディ・ララバイ》をもらった2スマッシュを活かしてプレイ。難なく《逆鱗のコルブス》を溶かす。
 期待の戦力を失った和田は《闘神ニシキ》で対抗するが、これも《レディ・ララバイ》の前に敗れ去る。ようやく《ステルス・スナイパー》《レディ・ララバイ》を焼殺し、攻めに転じるタイミングが来た頃には既に今井の合体ベース《陽気な森》《陽気な幽霊屋敷》《陽気な墓場》が揃って能力を起動。《ステルス・スナイパー》すら溶かされる。
 今井は直後のターンで《サイレント・ナイト》をプレイし、《陽気な幽霊屋敷》セットを再び配置。既にデュエルは今井の時間に突入していた。今井は回収した《レディ・ララバイ》を和田の喉下に進め、ユニットのプレイすら許さない体制を構築する。
 和田はプランからの《ステルス・スナイパー》で応戦するが、今井は白最強ユニットの一つ《犬闘士ケルベロス》をプレイし、自軍エリアの《犬闘士フェンリル》《犬闘士テリア》をフリーズすることで一気に敵軍エリアまで走らせる。
 これの対処に苦慮させられる和田は、除去には成功するが、反撃を行なう余力はない。今井はそれを見据えてジリジリとスマッシュを重ねていく。
 ここで和田は逆転を信じ、すべてのエネルギーを注いで、プランから《カオスヘッド・ドラゴン》をプレイするが、それも再び呼び出された《レディ・ララバイ》がベースの支援を受け、《カオスヘッド・ドラゴン》を踏み倒す。
 和田は《犬闘士ケルベロス》の中央投下でスマッシュを回復し、何とか生き残りの道を模索するが、それもわずかに1ターン延命したに過ぎない。プランから出た和田の最後のユニット《キングケーキ》すら《シャウトする人形ナオ》で完封。王者らしい徹底したコントロールで2連勝。緒戦を完勝でものにする。
 
(注目すべきポイント)
 今大会、多くのデッキで採用された《レディ・ララバイ》。コントロールタイプのデッキに限らず採用されたこのユニットの存在により、今大会では赤単速攻などの小型ユニットを中核としたデッキは生き残れなかったようだ。
 これらの情報を的確に仕入れ、対策ないし戦略に組み込むことが大会全体のデッキ分布を占うメタゲームの初歩である。自分のコミュニティ外の流行などもしっかりと把握して大会に臨むようにしよう。
 また、今井が見せた「呼声」ユニットへの適切なプレイングも地味ながら実に巧妙。「呼声」くらいなら……とついつい相手を許してしまっている人は是非参考にしてもらいたい。相手への拘束力が一段上がるはずだ。



・2回戦     平見友徳     VS     北広敏晃
      (グランプリ‐6‐優勝)


 2回戦は直前のグランプリを「勇者サイクロン」で制した技巧派プレイヤー平見友徳。今大会も実はグランプリ‐6‐に続き、会場付近を台風が直撃するという最悪の天候の中の開催となっていた。
 ……おそらくそれは平見の「サイクロン」が再び炸裂することを予見してのことだったのであろう。

Aデッキ 青緑ドラゴンパーティー(平見) VS 赤緑ファッティ(北広)

 「ドラゴンパーティー」と名付けられたデッキタイプは数種類確認されており、単純にくくることは出来ないが、共通しているのは《妖魔の勇者》《深淵竜エメラルドティアー》の組み合わせや《海洋到達不能極》などの各種「サイクロン」エンジンを搭載していること。それに《変幻獣バブルドラゴン》《フェアエル・パーティー》などの新カードを加えたタイプがもっともポピュラーであったため、この名称を「サイクロン型デッキ」の総称として使用している。
 そのため、「フェアエル・パーティー」などが確認できなかった平見のデッキを「ドラゴンパーティー」と称するのははばかられるところではあるが、読者の混乱を避けるため、レポート内におけるこのタイプのデッキの表記は「ドラゴンパーティー」に統一させていただく。
 さて、注目の対戦の解説に移ろう。
 お互い緑のエネルギーブーストを積んでいるため、北広は《底なしの大地》をプレイし、後の《スキップするフェアリー》の布石を敷き、対する平見は《大地の塔》《スキップするフェアリー》中央投下で、一気にエネルギーを伸ばす。さらに《人面鳥の止まり木》でキーカードの一つ《妖精竜スターフルーツ》を手札に引き込むことに成功し、エネルギーと手札で優位に立つ。
一歩遅れる形になった北広ではあるが、次ターンに《妖魔の勇者》《大地の塔》ラインにプレイし、それ以上の投下を阻止するとともに続くターンで《底なしの大地》のラインに《スキップするフェアリー》をプレイ。エネルギー量で追いつくとともに《スキップするフェアリー》を一歩前に出し、後方にプランから2枚目の《妖魔の勇者》をプレイ。盤上の優位を確保する。
対する平見は悩んだ末、《妖精竜スターフルーツ》をプレイ。その効果により、エネルギーゾーンから2枚目の《妖精竜スターフルーツ》をバトルスペースに出し、その効果で即《深淵竜エメラルドティアー》を降臨。1発目の「スターサイクロン」を決め、北広のユニット群をその自軍エリアまで押し戻す。
ユニットのパワーで劣る北広は自軍エリアが埋まっているため、平見の《妖精竜スターフルーツ》の効果を逆手に取れない。そのため、北広は中央エリアにいる《妖精竜スターフルーツ》《スキップするフェアリー》をぶつけ、《大巨人ゴッドファーザー》をプレイし、《破壊竜吼える》でリリース。エネルギーゾーンにある《スケイル・シューター》をぶつけて《妖精竜スターフルーツ》の除去を試みる。
しかし、それを黙って見ている平見ではない。《大巨人ゴッドファーザー》の能力にスタックし、《パラドクス・ストーム》で自身の《妖精竜スターフルーツ》《深淵竜エメラルドティアー》を入れ替え、2発目の「サイクロン」。《大巨人ゴッドファーザー》の効果を対象不適切で無効化する。
思惑が外れた北広はこの時点でエネルギーがフルフリーズ。この隙に平見は後方の《妖精竜スターフルーツ》を2枚目の《パラドクス・ストーム》で敵軍エリアに送り込み、合計8スマッシュのオーバーキルで、平見サイクロンの健在振りを見せつける。

Bデッキ 白黒幽霊屋敷(平見) VS 赤黒青流氷(北広)

 Bデッキはお互いがコントロール気味の遅めのデッキゆえ、立ち上がりは非常に静かな展開を見せる。
 まずは平見が《犬闘士チワワ》をプレイすれば、北広が《レディ・ララバイ》で応え、平見の《陽気な幽霊屋敷》《陽気な森》がプレイされれば、北広は《流氷の大陸》を張り返し、さらには《レディ・ララバイ》が中央エリアに移動。プレッシャーをかけ始める。
このまま行けば北広有利の展開だが、平見はそれを《神々の雷》による《流氷の大陸》破壊で断ち切ってターンを返す。  対して、北広。《ハウス・オブ・ヘル》で攻め込み、《レディ・ララバイ》のマイナス支援で実に除去しがたいスマッシュ体制を整え、先制のスマッシュを与える。
 しかし、平見は慌てず《陽気な幽霊屋敷》セットを完成。プランの回りは芳しくないが、《陽気な幽霊屋敷》を起動+《レディ・ララバイ》の中央投下でバトル突入前に《ハウス・オブ・ヘル》を溶かすことに成功する。これに北広の《ハウス・オブ・ヘル》が耐えるには《レディ・ララバイ》プレイにスタックし、山札を20枚ゲームから取り除く必要がある。当然、その様な無茶はできない。
 こうして盤面が更地になったところで、平見はプランから《ギガンティック・スカルドラゴン》をプレイし、攻勢に入ろうとするが、北広もすかさず《ナイトベア》でこれを除去。さらに2枚目の《ハウス・オブ・ヘル》でユニット数での優位を再び北広が支配する。
 一方の平見は《サイレント・ナイト》《陽気な幽霊屋敷》セットを復活。《サイレント・マジョリティ》で相手の山札を削り、盤面以上に重要な、ゲーム全体のコントロール権を握る。
 北広はスマッシュこそ与えていける状況だが、肝心のコントロール権を平見から奪取する方策がない。
 その証拠と言わんばかりに、返しの平見のターンではプランから2枚の《イビルアイ・ドライバー》が登場し、あっさりユニットを葬り去られる。北広は手札から続く戦力の《イビルアイ・ドライバー》をプレイするのがやっとの状況であり、時を刻むほどに平見のコントロールは強化されていく。
 何とか状況を好転させたい北広は切り札の一つ《時空を歪める者シュレーゲル》をプレイするが、平見は《陽気な幽霊屋敷》を再度起動。《犬闘士チワワ》で弱体化した《時空を歪める者シュレーゲル》を踏み殺した上でスマッシュし、北広の山札を削り取っていく。
 容赦のない平見は続いて回収した《ギガンティック・スカルドラゴン》をプレイ。手札破壊を恐れた北広はすべての手札にあるユニットを展開する。
 しかし、その行動もあくまで平見の計算のうち。《サイレント・ナイト》で三度《陽気な幽霊屋敷》セットが復帰した上に、北広が中央エリアに進めたユニットを《溺愛の魔煙ラバー》で撃退し、その能力で回収された《サイレント・マジョリティ》で北広のデッキをゼロに。典型的な「幽霊屋敷」デッキのもう一つの勝ちパターンで2連勝を飾った。

(注目すべきポイント)
 今回はAデッキの勝負の分かれ目となった平見の「サイクロン」の使い方に着目したい。《深淵竜エメラルドティアー》《パラドクス・ストーム》を絡める戦法は数ある「ドラゴンパーティー」の中でも多くは見られない。
 しかしながら、カードの相互作用を考えた場合の相性はあまりに抜群。これは「サイクロン」を使い込んだ平見ならではの技と言えるだろう。
 新しいカードばかりに目をやるのではなく、過去のカードを振り返ってみるのも、時にはデッキの強化に繋がるかも知れない。



・3回戦        生田瑛二     VS      入江裕太
      (グランプリ‐3-、‐5‐優勝)     (グランプリ‐3‐準優勝)


運命の悪戯とは恐ろしいもので、3回戦はグランプリ‐3‐の決勝戦と同じ顔合わせ。過去の対戦で入江を破り、グランプリを征した生田はその後、唯一の二冠王として更なる実績を重ね、D‐0プレイヤーの間に広く名を知られる存在となった。
果たしてこの機会に入江のリベンジはなるのか…

Aデッキ 青緑ドラゴンパーティー(生田) VS 青緑ドラゴンパーティー(入江)

 奇しくも同系デッキ対決となったAデッキ戦。エネルギーに置かれたカードからお互いにそれを察した二人はお互いに《大地の塔》をプレイ。直後、相手の《大地の塔》ラインに《妖魔の勇者》を置く、完全な鏡打ち状態でにらみ合う。
 そんな中、先に動いたのは生田。2枚目の《妖魔の勇者》プレイでけん制をかける。それに入江はプランから《センチネル・センチピード》で応え、《妖魔の勇者》を手札に戻すが、単発効果では状況の好転は望めない。
 しばらくはお互いドローしては優先権を放棄するターンが続く。
 そんな状況に業を煮やしたか、入江が《センチネル・センチピード》の移動を宣言。それにスタックして生田が《深淵竜エメラルドティアー》をいよいよプレイ。生田は結果的に1スマッシュを許すが、いよいよゲームが動き出す。
 生田はそのままプランからユニットを展開し、攻勢に拍車をかける。堪らず入江も《深淵竜エメラルドティアー》をプレイするが、生田は冷静に《サンダージャッカル》で自身の《深淵竜エメラルドティアー》を移動させ、再び「サイクロン」。入江の《深淵竜エメラルドティアー》をルールエフェクトで破壊した上でスマッシュを与え、山札の枚数的にも入江を追い詰めていく。
 入江は返しのターン、2点目のスマッシュを入れ返すが、未だ劣勢を覆すには至らない。ここは我慢のしどころと覚悟を決め、次ターン、生田の《深淵竜エメラルドティアー》のスマッシュを喰らいつつも、逆転の火種《変幻獣バブルドラゴン》をプレイする。
 スマッシュを含め、十分なエネルギーを得た入江のラストターン。場には《スキップするフェアリー》《変幻獣バブルドラゴン》《妖魔の勇者》が控えている状況から、《変幻獣バブルドラゴン》《深淵竜エメラルドティアー》に変化させ、さらに《フェアエル・パーティー》で膨大なエネルギーをリリース。《フェアエル・パーティー》のスタックで《妖魔の勇者》を迎撃されるが、「サイクロン」効果を絡めて《スキップするフェアリー》を敵軍エリア、《深淵竜エメラルドティアー》を中央エリアに進ませ、一気に逆転を狙える体制を敷く。
 さすがにこのスマッシュを黙って喰らうわけにはいかないと判断した生田は《サンダージャッカル》《スキップするフェアリー》を迎撃。ついでに自身の《深淵竜エメラルドティアー》を動かし、盤面を押し返そうと画策する。
 しかし、入江が狙っていたのは6点目のスマッシュではなく、まさにこの迎撃そのもの。プレイスタックで自身の《サンダージャッカル》をプレイし、「サイクロン」で《サンダージャッカル》の迎撃を《深淵竜エメラルドティアー》で受け止める形に。生田の《深淵竜エメラルドティアー》は位置をずらされ、自身の投下した《サンダージャッカル》の能力は対象不適切により無効化。「サイクロン」を発動できずに終わる。
結果、入江の《スキップするフェアリー》《深淵竜エメラルドティアー》が敵軍エリアに居座る形になり、迎撃手が尽きた生田に大逆転となる5スマッシュを決め、まずは入江がかつての借りを返すことに成功する。

Bデッキ 白黒幽霊屋敷(生田) VS 白黒ブルマスティフコントロール(入江)

 先勝を許した生田だが、さすがにここで連敗はできない。定番の《失恋の痛み》スタートで、入江の《冥界の門》を早々に叩き落す。
 一方、対「幽霊屋敷」を意識したコントロールデッキを仕上げてきた入江は落ち着いて《クリスタル・パラダイス》をプレイする。
 「幽霊屋敷」デッキの特徴は小型ユニットを《陽気な幽霊屋敷》の効果で倒し、回収した《ナイトベア》などで処理しきれない大型を倒すパターンを取る。それを考えると、繰り返し「対象にならない」能力を付与できる《クリスタル・パラダイス》の選択は実に正しい。
 しかし、その理論武装をあっさり打ち砕くのが、勝負の流れの恐いところ。
 《陽気な幽霊屋敷》セットの完成を目指す途中の生田がプランから《花束を捧げる乙女》を何気なくプレイ。一発で対策カード《クリスタル・パラダイス》を破壊してしまう。これで流れがどちらにあるかがハッキリとした両者。生田はプランの更新で《サイレント・ナイト》こそ墓地に落としてしまうが、《陽気な幽霊屋敷》セットを完成させる。
 続くターン、《ギガンティック・スカルドラゴン》をプレイしてきた生田に対し、入江は《ソーラービームサテライト》を起動し、《陽気な幽霊屋敷》をわざと起動させるが、入江が予見していた《ナイトベア》が手札に回収されたことを確認しているため、思うようにカードを出すことができず、彼我戦力はじりじりと開いていく。
 その隙に生田は《犬闘士ケルベロス》《ギガンティック・スカルドラゴン》で攻め入り、一気に4スマッシュを与える。
 このまま負けるわけにはいかない入江。ここまでに何とか《ナイトベア》を消耗させることに成功していたのが功を奏し、プランから《犬闘士ケルベロス》を無事にプレイ。《犬闘士チワワ》をフリーズして襲いかかり、《ギガンティック・スカルドラゴン》《犬闘士ケルベロス》の2体と相打ちをとる。
 しかし、このファインプレイも流れを引き戻す力までは残っておらず、生田のプランから見えた《サイレント・マジョリティ》と控えていた《犬闘士フェンリル》のスマッシュが山札を削りきってしまう。
生田としては二冠王の面目を保つ、1勝1敗の「引き分け」という結果で因縁の再戦は幕を閉じた。

(注目すべきポイント)
 ここではこれまでのすべての勝者が使用している今大会の最大勢力「白黒幽霊屋敷」デッキのシステムを解析しよう。
 グランプリ‐5‐時点でも生田を優勝に導いたポテンシャルを誇っていたコントロール能力に、U‐4で加わった新カード《ナイトベア》を加えることでさらに容易に大型対策ができ、《サイレント・マジョリティ》を積むことで「スマッシュしなくても勝てる」可能性を大きく広げた。《サイレント・ナイト》が帰ってきた現在ではこの2大「サイレント」のために《フロッグナイト・タクティクス》までを持ち出しているデッキも存在する。
 もちろん《犬闘士ケルベロス》の帰還も大きな作用の一つで、打撃力も戻っているのだから、多くのトッププレイヤーがこのデッキを選択したのは言わば当然の帰結とも言える。
 しかし、入江が狙っていたように対策がゼロと言うわけではない。事実、この対戦でこそ入江は敗北しているが、今大会では本選2位での決勝トーナメント進出を果たしている。
 この結果は目論見通り、上位卓の「幽霊屋敷」デッキを倒した証左であると言えるだろう。
 トッププレイヤーとは強いデッキのさらに先を見据えるものだと肝に銘じよう。



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