「D-0」日本選手権 本選 注目の一戦レポート 第二回
遊宝洞 前川勝
・4回戦 富田健(グランプリ‐2-優勝) VS 安田一成

 グランプリ‐2‐での「トロールバレー」での優勝以降、オープングランプリなどでも活躍する関東の雄、富田。対するは今回の本命デッキ「ドラゴンパーティー」と「幽霊屋敷」を携えた安田。賞金ランキング、知名度のどちらをとっても富田が勝る状況下で、安田は実力を発揮しきることができるだろうか?

Aデッキ 赤黒青流氷(富田) VS 青緑ドラゴンパーティー(安田)

 やはりお互いが重いデッキであるため、序盤は手札の整理とエネルギーブーストに終始することになるが、安田が《粉雪の魔氷パウダースノー》をプレイして手札を増やせば、富田は《失恋の痛み》でキーカードを落としていく。
 しかし、安田には序盤にプレイできるもう一つのキーカードがある。
そう、後にドラゴンに変化する《変幻獣バブルドラゴン》だ。安田はこれの早期プレイに成功し、後の布石をしっかりと敷く。対する富田もキーカード《流氷の大陸》をプレイし、さらに《サイバー・チェイス》で手札を整えていく。
だが、安田は続くターンで富田の《流氷の大陸》ラインに《妖魔の勇者》をプレイして事実上、《流氷の大陸》を封印。橋頭堡を失った形になった富田は攻勢に出ることができなくなってしまう。
それを見切った安田は《大地の塔》をプレイし、《粉雪の魔氷パウダースノー》を中央投下。エネルギーの最終ブーストを掛けた上で《深淵竜エメラルドティアー》を手に入れ、いよいよ安田が動く。
まずは中央エリアに進めた《変幻獣バブルドラゴン》《妖精竜スターフルーツ》に変化して2スマッシュ。富田はそのターン、有効な反撃こそできないものの《妖精竜スターフルーツ》の効果を逆手にとり、《粉雪の魔氷パウダースノー》2枚をエネルギーに転換し、次の一手に掛ける。
 だが、バトルスペースには安田の《妖精竜スターフルーツ》とその効果で出現した《深淵竜エメラルドティアー》。富田はこの2大神竜に対して、迎撃を考慮した上での有効な対抗手段を引ききれず、《妖精竜スターフルーツ》の効果で自身の《深淵竜エメラルドティアー》を出すのが精一杯。
 安田は2枚目の《変幻獣バブルドラゴン》を戦線に加えて攻め込み、富田最後の反撃を《サンダージャッカル》で回避。5スマッシュを叩き込み、富田から金星を挙げる。
 
Bデッキ 青白グラシア(富田) VS 白黒幽霊屋敷(安田)

 富田のBデッキは「青白グラシア」。《犬闘士ボクサー》《犬闘士テリア》が投入されていることから、《妖精竜スターフルーツ》対策のデッキであったと推測される。
 万一、デッキの使用順が異なれば、結果は分からなかったかもしれないが、目の前に対峙する安田のデッキは「幽霊屋敷」。《機械竜グラシア》の闘気による「対象にならない」能力付与があるとは言え、それを期待していては「幽霊屋敷」が磐石の態勢を築くのが先であろう。
 無論、それを察した富田は序盤から《ソーラービームサテライト》を張り、《陽気な幽霊屋敷》セットの完成をけん制しつつ、《犬闘士ボクサー》を一気に敵軍エリアまで走らせ、スマッシュを与えていく。
 しかし、Aデッキで勝利を挙げた勢いは引き運にも表れ、2セット分の《陽気な幽霊屋敷》セットを引き入れた安田が早々に《陽気な幽霊屋敷》セットを完成、起動させて優位を磐石にする。
 苦しい展開になった富田はキーカード《機械竜グラシア》をプレイし、唯一残ったユニットである《犬闘士フェンリル》をも前線に出し、攻撃の続行を目指す。
 しかし、安田は闘気が乗る効果にスタックして《レディ・ララバイ》を投下。《サイレント・ナイト》《陽気な幽霊屋敷》セットを戻し、起動した上で《犬闘士ケルベロス》《機械竜グラシア》を叩き潰す。
 キーカードを失った富田はそこからの逆転は不可能と判断。潔く投了を選択した。

(注目すべきポイント)
 2連勝の大金星を挙げた安田のデッキは既に解説している上に、後ほどのレポートでも再び安田の戦いをお送りすることになるため、ここでは敢えて割愛し、Aデッキでの富田の終盤のプレイにスポットを当てよう。
 敗色濃厚の空気が流れ始めたデュエルにおいては案外諦めて投げやりなプレイに走ってしまうことはないだろうか?
 しかし、賞金の掛かった大会でも簡単に諦めたら、それはプロとしては失格だろう。その点で、富田が安田の《妖精竜スターフルーツ》の効果を逆手にとり、《粉雪の魔氷パウダースノー》をエネルギーに送り込んで見せる冷静な判断力とギリギリまで諦めない心はデッキ構築のノウハウやプレイングの技術以上に見習うべきプレイヤーとしての精神であると言えるだろう。



・5回戦 後藤大輔 VS 河村和幸
    
  賞金決定ラウンド進出を賭けた5回戦目はその時点での上位卓のプレイヤーを中継。勝負、それもこういった大型の大会というのは不思議なもので、まるで運命の女神に選ばれたかのような勝ち上がりを見せるプレイヤーを生み出すことがままある。果たしてこの二人のうち、より上位に進むのはどちらなのか。

Aデッキ 黒単ビート(後藤) VS 赤黒青流氷(河村)

 端からスピード勝負と意識している後藤は、当然「流氷」デッキが機能する前に勝負を仕掛けたいところ。最速で《レディ・ラベンダー》《レディ・ララバイ》のサキュバス軍団を投入し、戦線を構築する。
 さらに続くターンで自軍エリアに「呼声」ユニットを並べた上で《レディ・ララバイ》を敵軍エリアまで進ませ、相手のユニットのプレイに対し、プレッシャーをかける。
 ここで河村は自分のターンにキーカードである《流氷の大陸》をプレイするが、ここで後藤は《レディ・ララバイ》をフリーズし、「隊列召喚−スモールアイ」で《不幸の指輪》をプレイ。
 続く自分のターンで後続の《ハウス・オブ・ヘル》をプレイしつつ、「呼声」ユニットが進軍し、見事に4スマッシュを叩き込む。
 しかし、河村もただではやられない。スマッシュを喰らいつつもプレイしておいた《レディ・ララバイ》が中央エリアに進軍し、そのエリアにいた小型ユニットをまとめて一掃。厄介な《ハウス・オブ・ヘル》の進軍も《濃霧の魔氷フォッグ》で阻止し、残った後藤の《レディ・ララバイ》に5スマッシュ目を喰らいながらも、ようやく河村の時間がスタートする。
 満を持して起動された《流氷の大陸》からは《時空を歪める者シュレーゲル》が後藤の《レディ・ララバイ》を吹き飛ばしながら降臨。2スマッシュを返す。
 一方、一気に攻め手を失った後藤。プランからの《スリーピング・パペット》《石化の呪法》《レディ・ララバイ》を倒すが、河村に《粉雪の魔氷パウダースノー》を同ラインにプレイされ、《スリーピング・パペット》は次の河村のターンにあっさり墓地行き。《時空を歪める者シュレーゲル》と合わせ、スマッシュ数で5対5に並ばれる。
 後藤はプランからの《ハウス・オブ・ヘル》《時空を歪める者シュレーゲル》だけは排除するが、肝心の《流氷の大陸》への有効な防御策がなく、河村が悠然と勝利をものにする。
 
Bデッキ 赤白ニトログラシア(後藤) VS 赤単隊列召喚アウリガ(河村)

 勝利した河村は勢いをそのままに序盤から《マントルを漂う遺跡》《熱砂のパヴォ》をプレイ後、プランから《爆砕の魔炎バーン》を引き当てる幸運に恵まれる。
 しかし、後藤も返しのターンで《爆砕の魔炎バーン》のラインに《煌く鋼糸の乙女》をプレイし、攻め手を抑制する。
 続いて、《犬闘士フェンリル》《天使達が踊る針》《変形城砦タルト》を展開し、防御を固めていく後藤。《天使達が踊る針》の能力で闘気をつけ、強化した《煌く鋼糸の乙女》を進軍させ、《爆砕の魔炎バーン》を倒し、1スマッシュを与える。
 一転、攻め手が失われたかに見えた河村だが、再びプランから《爆砕の魔炎バーン》を引き当て、《熱砂のパヴォ》の後ろに《フ・フーンダ》を展開しながら、2枚を同時に中央エリアへ進軍。この時、河村は手札にキーカード《乱舞のアウリガ》を抱えている状態。後藤が《爆砕の魔炎バーン》を迎撃してくれれば、まんまと「隊列召喚−ビッグアイ」を決める算段である。
 しかし、その「《乱舞のアウリガ》の空気」を読み切った後藤は《乱舞のアウリガ》召喚阻止のため、《熱砂のパヴォ》の前に《煌く鋼糸の乙女》をプレイ。河村の計算を崩す。
 だが、河村はここで妥協しての3スマッシュ……などという甘っちょろいことは言っていられない。ぐずぐずしていれば2枚の《煌く鋼糸の乙女》が歩き回り、戦力をズタズタにされる。
更なる高みを求め、プランを行う河村。勝利の女神はその心意気に応えたのか、なんと3枚目の《爆砕の魔炎バーン》がこのタイミングでプランから現れる。
河村は全エネルギーを使用することになったが、《爆砕の魔炎バーン》2枚と《熱砂のパヴォ》で一気に5スマッシュを与え、勝利への王手。
ターンが帰ってきた後藤は、当然ながら《煌く鋼糸の乙女》を駆使して河村のユニットを全力で排除し、2スマッシュ目を与える。1ターンでスマッシュ数に大差を付けられるが、まだ盤上では有利な点を有効に活用したいところである。
一方の河村はどの様にして残り2スマッシュを叩き出すかを思案。《爆砕の魔炎バーン》を使い切った今、有効なのはやはり手札にある《乱舞のアウリガ》である。このまま後藤にちまちまスマッシュを与えられるわけにもいかない河村は2枚の《マントルを漂う遺跡》を張った状態で、《乱舞のアウリガ》のプレイタイミングを伺う。
次の後藤のターン。盤面上の有利は変わらないので、後藤はそのまま優先権を放棄。それを受けた河村はこのターンでの致命傷はないと踏んで《マントルを漂う遺跡》ラインに最後の手札《乱舞のアウリガ》をプレイ。パワー8000、スマッシュ2のユニットで後藤の命を狙う。
それを受けて、後藤はプランを作成。そこから出てきたのはなんと、河村がまったく予想していなかったであろう《ニトロ・カタパルト》! これを見た後藤の目がキラリと輝く。
後藤は手札から《オーラマスター・エンジェル》をプレイし、《ニトロ・カタパルト》で敵軍エリアに特攻。元より敵軍エリアにいる《煌く鋼糸の乙女》と、控えていた《犬闘士フェンリル》の前進で、なんといきなりの5スマッシュを叩き込む。
河村の思惑を上回るまさかの一発攻勢で、後藤は星を五分に戻すことに成功した。

(注目すべきポイント)
 この戦いで注目すべきはやはり、ほぼオリジナルと言っていいであろう後藤のBデッキの独創性だ。
 これまでの「グラシア」はあくまでキーカードである《機械竜グラシア》を出してから力押しを仕掛ける印象が非常に強い。
だが、その分スマッシュするスピードが遅くなり、ウィニーに対処しづらいという点があったのも事実だ。
 実際、河村がやってみせた《爆砕の魔炎バーン》3連発などという馬鹿げた引きをやられたら、通常の「グラシア」デッキでは対応が間に合ったかは怪しい。
 その点を補い、かつ勝ち手段を河村に敢えて「読み誤らせた」後藤のデッキの奇襲性は特筆に価する。
 他人がなかなか考えつかない、いわゆる「地雷デッキ」はこのように相手の計算を狂わせてこそ、真価を発揮する。
 オリジナルデッキを組もうという人はそのポイントを念頭においてデッキを構築してみよう。明日のトーナメントデッキは案外そういった着想の中から生まれ出るものなのだ。



・賞金額決定ラウンド 後藤大輔 VS 安田一成 
    
 賞金額決定ラウンドに進出したプレイヤーのうち、最上位卓は決勝進出のポイントを計算し「同意による引き分け」を行なう卓も少なくはない。しかしながら、その分水嶺に立たされているプレイヤー及び更なる上位での決勝進出を狙うプレイヤーにとってはここにおいても目の前の強敵を討ち取らねばならない。
 そんな悲喜交々の最終戦は先ほど注目の一戦でも紹介した、類型が少ないデッキを駆使する後藤と王者を下した安田。成績次第では決勝トーナメントも狙える2人の勝敗は果たして……。

Aデッキ 黒単ビート(後藤) VS 青緑ドラゴンパーティー(安田)

 やはり重めのデッキとの対戦となった後藤は当然7スマッシュを早急に叩き込みたいところだが、半端なスマッシュは安田のエネルギー源となりかねないのが難しいところ。
 しかしながら、ここで自身の戦い方を曲げては、勝利がさらに遠のくばかり。後藤は定石の2ターン目「呼声」ユニットである《レディ・ラベンダー》をプレイする。しかし、時間を稼ぎたい安田はここでシーズン制限カード《海洋到達不能極》をスタックでプレイ。《レディ・ラベンダー》を手札に戻し、後藤の貴重な「時間」を削り取る。
 そして自身は《変幻獣バブルドラゴン》を悠々と準備。安田はエネルギーブーストで後藤のビートのスピードに完全対応。後藤の《ハウス・オブ・ヘル》のプレイには《妖魔の勇者》、続くターンの《不幸の指輪》に合わせて2枚目の《妖魔の勇者》と、知らない人が見たら何かのいじめかと思われそうなほどのプレイングで安田が圧倒的に有利な場を築き、いよいよ《変幻獣バブルドラゴン》《深淵竜エメラルドティアー》に変化させる。
 こうなってくると、後藤の希望と安田の懸念は「サイクロン」の影響を受けない中央エリア、中央ラインのスクエアに攻め込んでいる切り込み隊長《ハウス・オブ・ヘル》のみ。後藤は他のユニットを下手にプレイできない状態の中、地道に1スマッシュずつダメージを重ねていく。
 一方の安田はこれまでの快調さの振り戻しがここで現れたか、《ハウス・オブ・ヘル》の対処手段を引き当てることができなかったが、数ターン後、ようやく《センチネル・センチピード》がプランから登場。いよいよ「後藤の時間」が終焉を迎える。
 こうなれば「ドラゴンパーティー」は相手の場を荒らし放題にすることができる。安田は万が一の迎撃にも対応できるよう、綿密な計算をしながら「サイクロン」ですべてを巻き上げ、ゆっくりだが確実なスマッシュを入れていき、まず1勝。勝ち点3以上を確定させる。
 
Bデッキ 赤白ニトログラシア(後藤) VS 白黒幽霊屋敷(安田)

 先ほどの5回戦では見事な逆転劇を見せてくれた後藤の赤白ニトログラシアは相当な練習を積んできたであろう安田ですら、対戦経験が少なかったようで、エネルギーに置かれたカードからその中身に気づいた彼はわずかに驚嘆の声を上げる。
 しかし、ここに来て尻尾を巻いて投了するわけにもいかない安田は赤白の「呼声」ユニット《熱い眼差しの乙女》《レディ・ララバイ》で除去。後藤も負けじと《天使達が踊る針》《花束を捧げる乙女》を強化し、ビートダウン体制を堅持。いざ攻め込むターンになって、安田の《神々の雷》《天使達が踊る針》を割られるが、今重要なのはスマッシュを稼ぐことと《花束を捧げる乙女》の眼前に居座る天敵《犬闘士チワワ》を踏み倒すことである。後藤は一気に敵軍エリアまで攻め込み、2スマッシュを安田に与える。
 しかし、単発の攻めでは「幽霊屋敷」を揺るがすことができない。プランからの《イビルアイ・ドライバー》で難なく《花束を捧げる乙女》を屠った安田はさらにユニットを展開。盤面に《レディ・ララバイ》も残っているこの状態を維持していきたいところである。
 その状況を当然理解し、何とか《レディ・ララバイ》を除去したい後藤が、プランからの《ステルス・スナイパー》強襲するが、安田は手札に抱えていた《陽気な墓場》をプレイ。直後にパンプアップ能力を起動して《レディ・ララバイ》を守り抜き、《機械竜グラシア》の登場に合わせて《ギガンティック・スカルドラゴン》のプレイに成功。
 状況の打開にエネルギーを使い尽くしてしまっていた後藤は反撃の術を失い、安田はその隙に全軍を前に出して一気に7スマッシュ。見事最高の形で最終戦を終え、本選最終結果を3位でフィニッシュ。次の日の決勝トーナメントでのシード権を獲得した。

(注目すべきポイント)
 これまで大会の常連でこそあれ、輝かしい成績を残せなかった安田が確実に力をつけているのは最早間違いはない。その確固たる証拠とは何であるか?
 その答えは(多くのプレイヤーにとっては釈迦に説法かも知れないが)Bデッキの中盤、後藤の《ステルス・スナイパー》による《レディ・ララバイ》落としを重要なデッキパーツの一つである《陽気な墓場》を駆使して守りきったプレイングを決する判断力にある。
 これは「相手のデッキがデカい一発を内包したデッキである上に《機械竜グラシア》までの時間を与えることは絶対にできない」と心に決め、《陽気な幽霊屋敷》による対応を捨てていく覚悟がなければできない判断だ。
 このことを解していないプレイヤーは「幽霊屋敷」デッキ自体のコントロール力に頼りきって、うっかりこの除去を容認しかねない。
 デッキのセオリーや勝ちパターンが明確にされているデッキでも、杓子定規に同じ回し方を目指す練習をするのが上達を意味するのではない。大切なのは咄嗟の場面でいかなる対応ができるかということである。
 これから強くなっていこうとするプレイヤーはその点を意識してもう一度自分のデッキを見つめ直してみよう。きっと今まで気づかなかった勝利への道筋が見えてくるはずである。



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