第六回 「D-0」日本選手権 決勝トーナメントレポート
遊宝洞 前川勝

準決勝 高橋成典 VS 安田一成
  (本選1位通過)   (本選3位通過)

 「セカンド・センチュリー」最後の戦いとなる決勝戦。会場中のすべてのプレイヤーが固唾を呑んで見守った試合は準決勝で岡谷の「ドラゴンパーティー」、「幽霊屋敷」を2連勝で破った、今大会最強のコントロールデッキ使い、高橋と本選から何度もレポートに登場し、カメラの前では必ず2連勝を飾ってきた「Mr.注目の一戦」こと安田。
  その戦いは公式に動画として公開されているため、筆者の稚拙な情景描写をお読みいただくよりはそちらを観察していただいた方がよりリアルに、自分なりの分析、考察の役に立つと思われるので、未見の方は是非とも一度は最後までご覧いただきたい。
  よって、今回のレポートは画像には写らない、両プレイヤーの思考を分析することで「何故ここでこのプレイを?」という部分の答えの一助となるように努めていきたい。

1本目 Aデッキ  白黒幽霊屋敷(高橋)  VS   青緑ドラゴンパーティー(安田)

 早々に《フェアエル・パーティー》を引き込んだ安田に対し、高橋は《陽気な森》を展開した上で手札には《陽気な幽霊屋敷》を抱えており、手札の回りは互角と言ってもいいだろう。
  しかし、安田にとって思惑通りにいかなかったのは、高橋がプレイしている《犬闘士テリア》。この能力によって安田の常套手段であった序盤のエネルギー破壊が《大巨人クレーター・メーカー》以外では難しくなり、せっかくのプランからの《カオスビースト・ナインテイル》も単なるパワー4000ユニットに成り下がってしまう。
  続くターンに《陽気な墓場》をプレイした高橋はいつでも《陽気な幽霊屋敷》をプレイ、起動ができる状態になっており、潜在的なバトルスペースの支配権をこの時点で掌握することになる。
  となれば、高橋は得意のコントロールで7点目のスマッシュを喰らわない算段をすればいいだけという状態。
  その状況を打破したい安田が《カオスビースト・ナインテイル》を懸命に前進させ、《犬闘士テリア》を潰しても、その上に2枚目の《犬闘士テリア》を投下。ベースの支援効果で一方的に《カオスビースト・ナインテイル》が潰され、続く大型ユニット達も《妖精竜スターフルーツ》の能力が《犬闘士テリア》に阻害され、高橋に《犬闘士ケルベロス》を一方的に明け渡すことになる非常に苦しい展開となる。
  それでも攻めないわけにはいかないのが今の安田が置かれている状況。《妖精竜スターフルーツ》のサイズに頼り、スマッシュを与える。
  対し、高橋は《陽気な幽霊屋敷》セットを完成させ、《犬闘士ケルベロス》を前進させ、スマッシュを返す。この行動は《妖精竜スターフルーツ》に対する防御策《ナイトベア》を既に手中に握りこんでおり、パワー9000となっている《犬闘士ケルベロス》を安田が除去しなければそのままスマッシュを与え続けられればいいし、除去するにしても安田はエネルギーと手札を消耗させることができる。そして何より「山札」を削ることもできる。高橋にとっては三段構えの優位に立った絶妙なプレイングである。
  そのような状況で安田は《妖精竜スターフルーツ》を除去され、仕方なく《犬闘士ケルベロス》《粉雪の魔氷パウダースノー》《妖魔の勇者》で倒し、本来ならば攻める状況で使いたかった《フェアエル・パーティー》を使って反撃手の模索を行なわねばならなかった。
  この時点で安田は既に高橋の手のひらの上。わずかな反撃の希望である《変幻獣バブルドラゴン》すら《失恋の痛み》で落とされれば、やってはいけないとはわかりつつも無為にターンを消耗するのみ。
  最後は高橋が《サイレント・マジョリティ》で安田の山札を削りきってしまう。

2本目 Bデッキ  黒赤デビルクロック(高橋)  VS   白黒幽霊屋敷(安田)

 運命の2本目。お互いがコントロールデッキだが、「幽霊屋敷」のプレッシャーは、墓地から手札に帰ることができる「デビルクロック」に対してはさほど高くはない。しかしながら、安田は高橋のスマッシュを阻止するため、《陽気な幽霊屋敷》セットを揃えた上で山札を削りきる方向へ持っていかねばならない。
  そのため、安田は《失恋の痛み》《犬闘士チワワ》《陽気な森》を順次展開。高橋は盤上のアドバンテージを奪うため《悪運時計ハードラック》、対処法を潰すために《ペットセメタリー》をプレイ、起動して対抗する。
  続けて高橋は《呪われた館》で安田を追い詰めんとするが、ここで安田は《サイレント・マジョリティ》をプレイし、計画通りに山札を削る。
  対する高橋、安田の手札が残り1枚と見るや、《呪われた館》ラインで《肉食時計ビッグマウス》《シルバーワイズ・ドラゴン》に変化。初手から握りこんでいた、もう1枚の《サイレント・マジョリティ》を落とすことに成功する。
  安田は《陽気な墓場》を設置するが、その間のプランで《サイレント・ナイト》をすべて失い、《陽気な幽霊屋敷》を軽々に起動できない苦しい展開。
  対して高橋は《終末時計ジ・エンド》で静かに軍備を増強。スマッシュへ向けての姿勢を固めていく。
  安田はプランからの《イビルアイ・ドライバー》でその軍勢を切りくずさんとするが、《シルバーワイズ・ドラゴン》は死に際にも安田の墓地のユニットをゲームから取り除き、安田の山札に《イビルアイ・ドライバー》が帰ることを許さない。
  さらに安田にとっては間の悪いことに、このプランで最後の《サイレント・マジョリティ》が見えてしまう。これをプレイできれば問題はなかったが、あいにく今はエネルギーが足りない。
  高橋は当然これを《終末時計ジ・エンド》でスマッシュへと埋める。
  安田はこの《終末時計ジ・エンド》《溺愛の魔煙ラバー》で迎撃し、《神々の雷》《呪われた館》を破壊し、迎撃手を確保しつつ、時間が過ぎ行くのを待つが、高橋は《絶叫時計スクリームハイ》《肉食時計ビッグマウス》をプレイし、再び攻勢に出られる機会を伺う。
  その後、安田は《陽気な幽霊屋敷》セットを完成。《花束を捧げる乙女》でスマッシュを回復するが、高橋も《肉食時計ビッグマウス》を再び《シルバーワイズ・ドラゴン》に変化。ユニットを丁寧にゲームから取り除きつつ、2枚目の《終末時計ジ・エンド》で再びスマッシュを与えていく。
  このままスマッシュを与え続けられえては《サイレント・マジョリティ》で稼いだ山札のアドバンテージを失う安田。自らもスマッシュを与えるべく《花束を捧げる乙女》を前進。プランからの《イビルアイ・ドライバー》《終末時計ジ・エンド》を倒すが、《花束を捧げる乙女》《悪運時計ハードラック》で撃墜され、《シルバーワイズ・ドラゴン》でゲームから除外されてしまう。
  追撃した安田の《イビルアイ・ドライバー》も次のターンには同じパターンでゲーム外に吹き飛ばされるが、既にこの時点で両者のデッキは指折り数えるほど。
  1ドロー1スマッシュが命を削る状況まで攻防は続く。
  そして、高橋のデッキが残り4枚となったところで安田は《犬闘士ケルベロス》をプレイ。《犬闘士チワワ》をフリーズして前に出し、自軍エリアに召喚しておいた《レディ・ララバイ》を敵軍エリアまで突っ込ませる。このままスマッシュを与えれば、次の高橋のドローで勝負が決するはずである。
  しかし、そこで高橋は手札に隠し持っていた《ステルス・スナイパー》を中央投下。山札に戻すことでもう1ターン延命する。
  そうして向かえた高橋の最終ターン。安田の墓地にユニットは0枚、山札は残り3枚。《シルバーワイズ・ドラゴン》で敵軍エリアの《犬闘士チワワ》を踏み殺し、スマッシュを与えれば、安田が狙った山札切れをそのまま返すことができる状況である。
  そのため、高橋は《シルバーワイズ・ドラゴン》を前進。安田は最後の抵抗で《陽気な幽霊屋敷》を起動する。
  対して自らの墓地のユニットをゲームから取り除き、《シルバーワイズ・ドラゴン》のパワーを引き上げ、マイナス修正を打ち消した高橋。
  最後の抵抗を打ち破られた安田は万事休すの場面であったが、この時、高橋は致命的な計算ミスを犯す。
  その時、高橋の《シルバーワイズ・ドラゴン》《陽気な幽霊屋敷》《レディ・ララバイ》の能力でパワーに−7000の修正を受ける形になっており、これを自身の能力の6回起動し、パワー500で生き残った状態。
  よって移動が解決されると《レディ・ララバイ》の修正がなくなり、パワーは2500となる。よって、能力をあと3回起動し、《犬闘士チワワ》を叩き潰せばよかったはずだが、高橋は「パワー500で生き残った」という情報が強く刷り込まれ、「《犬闘士チワワ》を倒すには7回能力を起動しなければならない」という勘違いをしていたのだ!
  結果、高橋は勝っていた勝負に対し投了を宣言してしまう。
  これが、300万が掛かった戦いのプレッシャーなのか。冷静なコントローラーである高橋の計算すら狂わせるほどの魔力は、当事者でなければ分かりえるものではないだろう。

3本目  白黒幽霊屋敷(高橋)  VS  青緑ドラゴンパーティー(安田)

 前代未聞の事態で突入した3本目。死の淵からもう一度300万を狙える位置に踏みとどまった安田は「幽霊屋敷」勝負ではどちらを相手にしても不利と判断し、「ドラゴンパーティー」を選択。一方、今大会最大の計算ミスを犯してしまった高橋は絶対の自信を持つ「幽霊屋敷」で冷静さを取り戻したいところである。
  そうして始まった3本目。安田は3ターン目に《大巨人クレーター・メーカー》でエネルギーを破壊すると、それにつられるように安田のプランからは《大巨人コスモクエイク》が顔を覗かせる。
  ここで安田は戦略を徹底したエネルギー破壊を目指す方針に確定。《大巨人コスモクエイク》をプレイする。
  しかし、それは十分に予期していた高橋。《ナイトベア》でこれをあっさり屠り去る。
  切り札をあっさり除去された安田だが、ここで戦略を変更するわけにもいかない。2枚目の《大巨人コスモクエイク》をプレイし、さらに高橋のエネルギーを攻める。
  対し、高橋は《陽気な墓場》に続き《陽気な幽霊屋敷》をセット。《ナイトベア》でスマッシュを重ねていく。
  それでもまだ諦めない安田は《大巨人コスモクエイク》のサイドステップを試みるが、その隙を狙っていた高橋。スタックで《陽気な幽霊屋敷》セットを完成、起動して《大巨人コスモクエイク》を溶かす。
  戦略の要を失った安田。この時点で既にコントロール権を高橋に支配されていることを重々理解していたのだろうが、それでも諦めたわけではない。
  プランから《妖魔の勇者》《粉雪の魔氷パウダースノー》を場に出し、中央にセットしておいた《大地の塔》ラインに最後のエネルギーを用いて《センチネル・センチピード》を中央投下し、手札に戻ってくる迎撃役《粉雪の魔氷パウダースノー》の使用コストをまかなおうと計画していた。
  そう、計算していたはずだった。
  しかし、決勝戦の魔物が今度は安田の思考を狂わせる。
  《センチネル・センチピード》をプレイした安田の目にはスマッシュを食らわせ続けてきた憎き《ナイトベア》が写る。
  この時点での安田のスマッシュは3点。場に見えている高橋のユニットは《ナイトベア》《犬闘士チワワ》《犬闘士テリア》
  「あれ? 隣のラインにいる《ナイトベア》に投下して、《犬闘士チワワ》を戻さないと、全軍で攻められたらやられてしまうんでは?」
  実に理性的な判断だ。その考えに間違いはないだろう。
  しかし、その判断に従ってプレイした結果、当初計画していた「青エネルギーの確保」ができなくなったのも事実である。安田のエネルギーはフルフリーズとなってしまう。
  それを冷静に見据えていた高橋は2枚目の《犬闘士テリア》をプレイ。
次のターンには《妖魔の勇者》の影響を受けない犬達が安田の喉笛を掻っ切り、先ほどのプレイングミスを取り返す殊勲を上げる。
結果、高橋は1本分の苦労を背負い込みながらも、「D-0」史上初の、本選1位通過&優勝というパーフェクトな成績を残し、その手にかけがえのない栄光を掴んだ。

(この試合の見所)

 動画をご覧になった方は「何であんな凡ミスを?」「俺ならこんなプレイングミスはしないぜ」等と感じている人もあろう。
  しかし、これは「決勝戦」という特別な舞台だからこそ起こってしまう現象なのである。
もし、これが普通のデュエルならば、高橋も安田もプレイングミスをすることはなかっただろう(それは既にお伝えしたレポートをお読みいただければ分かることである)。
そういう意味で、今回の決勝は普段お目にかかることができない「決勝の魔物」の姿をあらわにした意義深い戦いになったと言えるだろう。
もちろん、この「魔物」はグランプリや日本選手権に限らず、例えば店舗予選の権利が掛かった試合に臨むあなたの身に襲い掛かってくることも十分に考えられる。
ではその時、あなたがプレイングミスを犯さないにはどうすればよいのか?
それは決勝レポートの冒頭で述べた「平常心」を失わないことだ。普段のあなたの力が出せれば、結果は自ずとついてくるはずである。

≫日本選手権2007決勝戦の映像はこちらから
◆D-0日本選手権決勝戦【前編】
◆D-0日本選手権決勝戦【後編】



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